キミが可愛いわけがない


「バカは風邪ひかないって、そのまんまの意味じゃなくて、風邪引いても症状に気付かないってことだよ。やっぱりほら、ユズのことじゃん。そんな顔面してるのにマスクしないで外歩くなんて自覚症状足りなさすぎ」


「あ?!ごんなグゾだるいどぎにうざいごどいうな!いだわれバガ!」


───ズンッ


「っいて!」


「自業自得や」


ユズは安定のパンチを俺の二の腕にお見舞いした。


「あんまり無理すんなよ」


「鼻水だけだじ、大丈夫」


ユズが我慢強いのを知っているから。
だから、本当はすごく心配たまらない。


我慢強くて強がりで。


正直、中学の頃あった出来事のせいで弱音を吐くようになったユズにちょっと安心している自分もいた。



俺の前では強がらないでほしいい。


俺の前だけは。



「きつかったら言えよ」


すぐに飛んで行くから。


「うん」


素直にそう返事をした彼女を横目で確認してから俺はまた彼女に胸を鳴らせた。



< 136 / 238 >

この作品をシェア

pagetop