キミが可愛いわけがない
「上履きは?」
黒い靴下でそのまま歩いているメガネくんに聞く。
上履きを履かないで普通歩かないはずの廊下にいるなんて、おかしい。
彼の顔を見ると、キュッと唇を噛み締めていた。
なんだか、中学時代の自分を見ているようで胸が苦しくなる。
私には打ち明けられる芽郁がいたけど、このメガネくんにはそんな友達いないのかな。
「私、河西 柚希」
「へ、あ、…えっと…」
バッと俯いて、耳を赤くさせる男の子。
いや、慣れてなさすぎだよ。
可愛いな。
「ふ、布施 未来(ふせ みらい)です」
メガネくんはそういうと、バッと頭を下げた。
「布施くんね!よろしくっ!」
私はそう言って、ニカッと笑顔を向ける。
─────ズキン。
それと同時に頭の痛みもひどくなる。