キミが可愛いわけがない


「上履きは?」


黒い靴下でそのまま歩いているメガネくんに聞く。


上履きを履かないで普通歩かないはずの廊下にいるなんて、おかしい。


彼の顔を見ると、キュッと唇を噛み締めていた。


なんだか、中学時代の自分を見ているようで胸が苦しくなる。


私には打ち明けられる芽郁がいたけど、このメガネくんにはそんな友達いないのかな。


「私、河西 柚希」


「へ、あ、…えっと…」


バッと俯いて、耳を赤くさせる男の子。


いや、慣れてなさすぎだよ。


可愛いな。



「ふ、布施 未来(ふせ みらい)です」



メガネくんはそういうと、バッと頭を下げた。


「布施くんね!よろしくっ!」


私はそう言って、ニカッと笑顔を向ける。


─────ズキン。


それと同時に頭の痛みもひどくなる。



< 141 / 238 >

この作品をシェア

pagetop