キミが可愛いわけがない
(side芽郁)
〜〜〜〜っっ!!!
なんの真似だよ、俺っ!
保健室を出てすぐの角を曲がってから、俺は壁に背中を預けて両手で顔を覆った。
恥ずい。
何が…。
『かっこつけさせろよ』
だよっ!
ユズ、すげぇぽかんとしてたし。
あぁ、ほんと恥ずかしい。
もともとも弱虫で意気地なしなんだから、あんなセリフ似合うわけもない。
それなのに…。
動き出さなきゃいけないって気持ちが大きくなってつい…。
けど今のは完全に失敗だ。
引かれたかもしれない。
けど…。
少し目がトロンとしてだるそうなユズに今なら言える気がして。
ユズ、本当に大丈夫だろうか。
教室に戻りながら、廊下側の窓を見る。
朝よりも風がビュービューと強くなっていて、そういえば台風が近づいていたっけ、と思い出す。