キミが可愛いわけがない


「芽郁…ありがとね」


保健室を出て、生徒玄関に向かって歩いていると、おでこに冷えピタを貼ったユズが俺のことを見上げてそう言った。



「何が」


ユズが何にお礼を言ってるのはすぐにわかったけど、嬉しくてついユズから顔を晒してぶっきらぼうにそう言ってしまった。


「いや〜本当、芽郁には色々バレちゃうな〜と思ってさ。すごいよね〜」



ユズは「私のこと大好きかよ」と笑いながら付け加えた。


「普段より増してゴリラだったからすぐにわかるよ。眉間のシワとか増えるし」


小学生かよ。
本気でユズを大好きな俺に対して、冗談のつもりで『大好きかよ』と呟いたユズにムキになってしまった。



「あーそうですねー」


────ドンッ


ユズがそう言って、俺の肩をパンチしたけど、そこ力がいつもより弱くて、やっぱりきついんだと改めてわかる。



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