キミが可愛いわけがない
────コンコンッ
震える手で、彼女の部屋のドアをノックした。
ユズが心配で来たのに、なんだか悪いことをしているみたいだ。
ユズの両親も帰ってこないってわかってて…って、別に変なことするわけじゃないし、そもそもユズ熱出てっし…。
「……」
ノックをしても返事がない。
「ユズー?」
─────コンコンッ
だんだん胸がざわざわとする。
人一倍我慢する子。
弱音を吐かない子。
昔からそれを知っているから、俺が彼女唯一のはけ口にならなきゃいけないのに。
俺の前で、我慢させちゃいけないのに。
「入るぞ、ユズ」
少し早口でそう言って、ガチャっとなるドアを開けた。