キミが可愛いわけがない
「ユズ、お前大丈────」
っ?!
「ユズっ!」
目の前には、ベッドまで辿りつけずに部屋の真ん中で倒れているユズがいた。
俺はすぐ駆け寄って、ユズの上半身を抱き上げる。
「ユズっ!」
「……っ、い?…なんで…」
俺の声でピクッと反応した瞼がゆっくりと開かれて、か細い声がそう言った。
「なんでって…お前が1人だから…」
それ以上話すのをやめた俺は、まずユズをベッドへ運ぶことにした。
それから…熱を冷まさないと…。
熱くなったユズの体と苦しそうな息遣い。
俺より体が頑丈だとかそんなことガキの頃の話で、今目の前にいるのはあの頃とは別のユズなんだ。
あの頃は、俺がユズにおぶってもらってばかりだったけど。
俺の腕の中で苦しそうな顔をしてるユズを見つめる。
まさか、こうやって俺がユズを抱きかかえる日が来るなんてな。
熱くなったユズの体を感じながら彼女をベッドまで運ぶ。