キミが可愛いわけがない
「…ん、芽郁のバカぁ」
っ?!
ベッドに横になったユズは、布団をかけてあけたタイミングで俺をバカ呼ばわりした。
ユズの方がバカなのに。
全然俺の気持ちに気付いてくれなくて。
挙げ句の果てに学校では極力話しかけんなだもんな。
「バカはお前だろ」
自分の限界がわからなくてすぐ無理してぶっ倒れて。
後先考えないで行動して俺に泣きつくし。
誰よりも傷つきやすくて、優しくて。
ほんっと、バカなのはユズの方だよ。
俺は、熱くなったユズのおでこに優しく手を置く。
ユズのそばにいたい。
ずっと。
そしてずっとユズの笑顔だけ見ていたい。
うるさいのに。
ガサツなのに。
ゴリラなのに。
この寝顔をやっぱり誰よりも可愛いと思っているんだから重症だ。
“好きだよ”
そのセリフを飲み込んで。
俺はユズの部屋を出てキッチンに向かった。