キミが可愛いわけがない


「…ん、芽郁のバカぁ」


っ?!


ベッドに横になったユズは、布団をかけてあけたタイミングで俺をバカ呼ばわりした。


ユズの方がバカなのに。


全然俺の気持ちに気付いてくれなくて。


挙げ句の果てに学校では極力話しかけんなだもんな。


「バカはお前だろ」


自分の限界がわからなくてすぐ無理してぶっ倒れて。


後先考えないで行動して俺に泣きつくし。


誰よりも傷つきやすくて、優しくて。


ほんっと、バカなのはユズの方だよ。



俺は、熱くなったユズのおでこに優しく手を置く。


ユズのそばにいたい。


ずっと。


そしてずっとユズの笑顔だけ見ていたい。



うるさいのに。


ガサツなのに。


ゴリラなのに。


この寝顔をやっぱり誰よりも可愛いと思っているんだから重症だ。



“好きだよ”


そのセリフを飲み込んで。


俺はユズの部屋を出てキッチンに向かった。



< 157 / 238 >

この作品をシェア

pagetop