キミが可愛いわけがない
(side柚希)


覚えているのは…。


養護教諭の先生が車の中から手を振ってくれてたことと


何か暖かい柔らかいものに体が包まれた気がしたのと


おでこにひんやりとした何かが触れたこと


まだ重い瞼をゆっくり開けると、頭がグラングランと揺れる感じがして「あ、やば」と思う。


少し開いた目には見慣れた天井が見えて、周りはゴーゴーヒューヒューとうるさい。


えっと…何があったんだっけな。


痛い頭で何か考えるのも嫌で、私は目だけをゆっくりと左右に動かす。


右には見慣れた薄ピンクのカーテン。


左には…。


あぁ、ママ。



ん?


ママにしては、なんかゴツゴツした感じが伝わってきて、しかもなんか…。


濡れてる。


「起きたかゴリラ」


っ?!


聞き慣れた低くて透る声がしたかと思えば、目の前に、幼なじみの顔面がバッと映り込んだ。



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