キミが可愛いわけがない


「…ユズ?」


ヤバッ。


寝ぼけた声で私の名前を呼んだその声に目をギュッと瞑る。


別に、ヤバイことなんてないのに。


思わず目をつぶって芽郁の声を無視したのは、さっき変なことを考えてしまった罪悪感だ。


「…起きたと思った」


独り言を喋る芽郁。


私は、芽郁にバレないように寝たふりを続ける。


痺れた左手から芽郁の体が離れた。


どっか…行くのかな。


芽郁は今、どんな顔してるのかな。



普段考えないこと。


それは台風のせいだし熱のせいだ。


「…ユズ、」


透き通る声で、芽郁がまた私の名前を呼んだ。


なんか、そんな真剣に呼ばれるとむず痒い。


ゆっくり目を開けてやろう、
そう思った瞬間。



っ?!


「─────っ、、?!」



唇に生暖かくて柔らかいものが触れて、


私は思わず目を見開いた。



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