キミが可愛いわけがない
(side 芽郁)
ユズに──────。
幼なじみに────。
キスをした。
いや、正確にはしてしまった、だ。
弱ってるユズを見ていると、
スヤスヤ寝てるユズを見ていると、
どうしても。
触れる以上がしたくて。
唇をすぐに離しても、ユズは目を開けなかった。
よかった…。
なんて思いながら、少しユズの目が覚めることを期待して。
何考えているんだろう。
自分でもよくわからない。
好きって、こういうことなのか?
嫌われたくないくせに、嫌われそうなことをして。
触れたいくせに、なんだか怖くて。だけど結局触れて半分後悔して。
だけど
『好き』
それだけは絶対に言えない。
もしユズが起きて、キスをした理由を聞いてきたらどう言うつもりだったんだろう。
わかんない。
俺はクシャクシャっと自分の髪の毛を盛大にかいてから立ち上がって、部屋を出てから一階のキッチンへと向かった。