キミが可愛いわけがない
「もう大分元気になったから、もういいよ」
「えっ、?」
「帰っていいよって、言ってるの」
なんでこうも、うまくいかないんだろう。
いや、自分の日頃の行いだ、と自分に軽くツッコミを入れる。
「いや、おばさんたち帰ってくるまでいるよ」
「なんで」
「…なんでって」
突然、少し声を大きくしたユズに俺は頭がハテナでいっぱいになる。
やっぱり、キスがバレてた?
それで怒ってんなら…。
早く訂正しなきゃ…。
急に体中が熱くなって、汗が出てくる。
「ユズ、あのさっきの…」
「ずっと考えてたんだけどさ」
俯いて喋るユズが今どんな顔をしているのかわからない。
だけど、近寄っちゃいけない気がした。
「私、芽郁の邪魔ばっかしてるよね」
「は?」
なんだよそれ。
なんでそういうこと言い出すんだよ。