キミが可愛いわけがない
「私がいるせいで、芽郁は伸び伸びとできていない。私の面倒みるって必死で…」
「は?そんなこと少しも思ったこと…」
「でももう大丈夫だから。ほら、咲菜とも仲良くなれたし、かよたちともそれなりに仲良いし?芽郁がなくても私、大丈夫だよ」
なんで。
なんでいきなりそんなこと言うんだよ。
あのキスが原因なら…。
「私は…咲菜の代わりにはなれないから」
「なにそれ」
「あれでしょ?練習台?みたいな」
ユズの声が震えている。
「幼なじみだからなんでも手伝ってくれるって勘違いしないでよ」
泣いているのはすぐわかっているはずなのに。
足が動かない。
手が震える。
ユズは、俺がキスした時、起きていたんだ。
でも、それを、
俺からの恋愛感情だって受け取らず、
変な勘違いをしている。
早く間違いを訂正しなきゃって気持ちはどっかに消えて。
「芽郁は…咲菜のことが好きなんでしょ」
弱って震えている彼女の口から発せられたセリフに。
俺の気持ちをわかってくれないユズに、単純にムカついて。
「ユズがそう思うんなら、そーなんじゃね」
大好きな彼女の部屋で、ぶっきらぼうにそう吐き捨てたんだ。