キミが可愛いわけがない
絶対信じたくないのに。
ユズが可愛いなんて、おかしいのに。
生まれた時からメガホンゴリラのユズだ。
可愛いわけなんてないのに…。
スースーと寝息を立てて目をつぶってる彼女を見て、
ドキッと胸を鳴らしてしまって。
彼女のその寝顔から目が離せなかった。
この寝顔を見られるのも、ユズにとって、俺が男じゃなくて幼なじみだからで。
多分、今彼女の唇をジッと見つめてる俺は、確実に幼なじみ失格のレールを進んでる。
「…芽郁」
っ?!
寝言…。
寝言で自分の名前を呼ぶ女がすぐ隣にいる。
この状況、危なすぎるだろ。
俺は枕に顔を押し付けて、気持ちを押し殺す。
世界で一番、大切な幼なじみだから。
「ユズ…俺も好き」
吐いたそのセリフは、
幼なじみとしての、好きだ。