キミが可愛いわけがない
バッチリ目が合ったのに─────。
晒された。
なんだよあの晒し方。
わざとらしい。
勝手に誤解して、今みたいな晒し方して…。
ユズへの好きが、ユズへのイライラが、爆発した。
俺は、ズンズンとユズのいる方へと歩いて行くと、ユズの背後からそのままユズの腕を掴まえた。
「は、ちょ!芽郁?!は、離してよ!」
もうどうでもいいよ。
ユズが大事にしてるものを大事にしたいとか、ユズの拠り所になることが俺の務めだとか…。
俺は、早歩きで体育館を出ると、騒ぐユズを無視して、体育館の裏の外階段へと連れて行く。
「芽郁っ!痛いって!」
そうだよ。
俺は男だから。
お前より強いんだよユズ。
力では全然勝てないし、勉強だって俺の方ができるんだ。
それなのに────。
どんどん俺を置いて遠くへ行っちゃいそうなユズの背中を追いかけるのが、毎日怖いんだよ。