キミが可愛いわけがない








─────ガチャ


─────パチッ


視界がピカッと明るくなる。


「あ、ユズの抜け殻」


落ち着く声がそう言って近づいてくる。


目はつぶっていても、わかる。


「友達と喧嘩した?」


私が落ち込んでるってわかった時だけ、気持ち悪いくらい優しくなる芽郁はズルい。


だからやっぱり、頼っちゃうじゃない。


「……した」


「あー?聞こえない。メガホンボイスはどこいったんだ〜?」


芽郁の部屋のベッドでうつ伏せになった私のすぐ横に座って、芽郁が聞く。



私だって落ち込む時くらい小さな声にもなるし。


「昔のこと…思い出しちゃった」


「そう…」


「あの頃に戻るのは…怖いよ」


「うん」


「本当の私がみんなにバレちゃったら…それこそ、もう立ち直れない気がする。一人ぼっちは…嫌だ」


< 29 / 238 >

この作品をシェア

pagetop