キミが可愛いわけがない
「…あっ」
「…あっ」
席に戻ろうとした瞬間、廊下を歩く人物と目が合った。
その人物は、走って教室に帰って行った1年生の背中をチラッと確認してからまた私を見た。
正確には私が手に持った袋を。
「芽郁〜あんたまた遅刻ギリギリ〜?勉強できるからって調子乗りすぎでしょ〜?」
目の前にいる人物をバカにしたような顔でみてそういう。
「何にもできないのに調子乗るよりマシだろ。なにそれ、また貰ったの?」
いちいち嫌な言い方をする黒髪ストレートショートの彼を若干睨む。
「いいだろ〜?私、モテモテなんだ〜!」
「女にだけな」
「いいもんっ!多分、芽郁よりモテてるんじゃない?」
「どーだか」
ドヤ顔の私を見ても動じない芽郁は、クールぶって隣のクラスへと向かって行った。
あーあ。
昔はもっと可愛かったのに…。