キミが可愛いわけがない
(side 芽郁)


『ユズちゃんきてるわよ』



お風呂上がり、母さんにそう言われて部屋に入ると、電気もつけずに俺のベッドで寝る女がいた。


明らかになんかありましたってオーラを全身から放っている。


ユズがそんな風に俺を頼ってきてくれるのは嬉しいのだけど。


俺のベッドに横になって、俺の枕に顔を突っ伏したままチラッと片目だけ見せた瞬間とか。


サラサラの短い髪を撫でた瞬間とか。


もっと見たい、触りたいなんて思ってしまう。


別に俺はお化けが怖いんじゃない。


暗くなった部屋のベッドでユズと2人きりになった時、いや、何もないのだが、あってはいけないのだが、


万が一のことを考えて注意した。



でも多分、ユズにそんなこと通じてないし、きっとこれからもこう言うことは続いていくと思う。




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