キミが可愛いわけがない
「だけど、女の子たちに嫌われたくなくて本当の気持ち隠してる。前みたいになりたくな
い。それで芽郁にも嫌な思いさせて…」
「それはしかたねーじゃん。ゴリラはゴリラでもメスゴリラなんだし」
「…ねー、ふざけないでよ…私落ち込んでんだよ?」
「知ってるよ」
だってさ…。
あんまり悲しそうな顔されると…。
この手がユズに何かしそうで怖いんだ。
最近はこればっかり。
「俺は気にしてねーから。今まで通り、ユズが来たいときにここにくればいいし、俺より友達優先しろよ」
それが、今君が大切にしてるものなら、
一緒に大切にしたいから。
「本当に?女々しい私キモくない?」
「キモくてもしかたねーよ。それがユズなんだから」
「キモい認めんのかよ」
「まぁ────ウグゥ」
ユズが投げた枕が思い切り俺の顔面に当たった。
「芽郁のバカ!」
「それ言いたいだけだろ。ちょっとモノマネ入ってるし」
「あ、気付いた?」
「当たり前だろ」
ユズに対してのこの感情に、まだちゃんと名前をつけたくない。
認めちゃったらそれこそ絶対に意識ばかりするから。
俺のこの感情よりも、ユズが俺を今拠り所にしてるって事実が何よりも大事だと思ってる。
ユズが俺を拠り所にしてくれてるのは、きっと俺がユズの『幼なじみ』だから。