キミが可愛いわけがない
(side 芽郁)


あれは一体なんの真似だ。


有馬詩音。

腹が立つ。

なんだか楽しそうなユズにももっと腹が立つ。


後ろから手を回したり、頭を撫でたり。


全部、俺だけがユズにできることなんだって思っていたことを、あいつはいとも簡単にやってのけて平然としている。


なんでユズなんだ?


女子はたくさんいるじゃないか。


どうしてユズにこだわるんだ。


俺は一通り仕事を終えると、キャンプ場から少し離れた自販機コーナに向かった。



「「あ」」


ちょうど、自販機の取り出し口からコーラを取ったユズと目が合った。


「芽郁、楽しそうだね。友達いないとか言ってた割に」


自販機から離れて、コーラのキャップを開けたユズが嫌な言い方をする。



なんだよ。
こっちはすげー無理して頑張ってたんだ。
なんでそんな言い方されなきゃいけないんだ。


「ユズも楽しそうじゃん。あのチャラ男と」


自販機のボタンを押してそういうと、ガランッとコーラが落ちてきた。





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