キミが可愛いわけがない


若松さんって、この間ハンバーガー屋さんで私が助けた子だよね?


そのあと体育の授業に丁寧にお礼してくれたあの若松 咲菜さんだよね?


『私、河西さんみたくなりたい』


彼女そんなこと言ってたっけ…。


そっか…若松さんは芽郁のことが好きで…それで芽郁も若松さんのことが…。


なんだなんだ。


やっぱり楽しんでるじゃん芽郁。


─────ギュッ


「えっ…」


突然、右手が何かに包まれたので思わず立ち止まって隣を見上げる。



「柚希、もしかしてお化けとか苦手?」


「…はっ」


有馬が私の手をギュッと握ったまま、私の顔を覗き込むんできた。



「いや…別に」


「そう?なんか、すごい顔が暗いから」


芽郁は、この道を若松さんと歩いたんだよね。


「大丈夫だから、早く行こ」


私は有馬の手を振りほどいて前を歩く。


芽郁は、若松さんとどんな話をしたんだろう。


あぁ、バカだな。


いざ、芽郁に私が必要じゃなくなったらと思うと急に不安だ。


もっと愛想よくしれとか、友達を作れとか、芽郁に言い聞かせてたのは自分なのに。


しかしやられた、友達の前に彼女を作るなんて。



< 72 / 238 >

この作品をシェア

pagetop