キミが可愛いわけがない
若松さんって、この間ハンバーガー屋さんで私が助けた子だよね?
そのあと体育の授業に丁寧にお礼してくれたあの若松 咲菜さんだよね?
『私、河西さんみたくなりたい』
彼女そんなこと言ってたっけ…。
そっか…若松さんは芽郁のことが好きで…それで芽郁も若松さんのことが…。
なんだなんだ。
やっぱり楽しんでるじゃん芽郁。
─────ギュッ
「えっ…」
突然、右手が何かに包まれたので思わず立ち止まって隣を見上げる。
「柚希、もしかしてお化けとか苦手?」
「…はっ」
有馬が私の手をギュッと握ったまま、私の顔を覗き込むんできた。
「いや…別に」
「そう?なんか、すごい顔が暗いから」
芽郁は、この道を若松さんと歩いたんだよね。
「大丈夫だから、早く行こ」
私は有馬の手を振りほどいて前を歩く。
芽郁は、若松さんとどんな話をしたんだろう。
あぁ、バカだな。
いざ、芽郁に私が必要じゃなくなったらと思うと急に不安だ。
もっと愛想よくしれとか、友達を作れとか、芽郁に言い聞かせてたのは自分なのに。
しかしやられた、友達の前に彼女を作るなんて。