キミが可愛いわけがない
「立てるか?」
「当たり前だろが。そんなに弱くない」
強気でいいながら、右手に力を入れて立ち上がろうとすると、
「……っ!」
ジンジンとさっきより強い痛みが手に伝わる。
あぁ。わかるよ。
暗くて手がどうなってるか見えないけど、多分、落ちてた枝か何かに手を置いてしまったみたいだ。
今、私の右手は血が出てると思う。
「…平気」
歯を食いしばって立ち上がりそうつぶやく。
「見せて」
有馬はそういうと、懐中電灯で私の体を照らした。
「大丈夫だからっ、早く帰ろう」
「…柚希」
「うっ、」
今まで見た顔より1番真剣な顔をしてる有馬に何も言えない。
「手、見せて」
かばうように後ろに回していた手に気づかれてしまった。
あぁ、いやだいやだ。
かっこ悪すぎる。
男の前で転ぶなんて。