キミが可愛いわけがない
「…柚希、血出てるじゃん!ったく…」
「…別にこれくらい平気だよ」
「なんなんだよ」
有馬は怪我してない方の私の手を掴むと、歩き出して呟いた。
「なんで強がんの?怪我したら素直に痛いって言えばいいだろ。柚希、女なんだし」
女、ねぇ。
「私、全然女じゃないよ。だからこんなのつばつけとけば治る」
『ユズのどこが女だよ』
芽郁にはずっとそう言われてきたし。
「好きとかそうじゃないとか関係なく、どっからどうみても、柚希は女の子だよ」
「……っ」
「なんでそんな、男勝りなキャラ貫ことしてるのか知らないけど、俺にはバレバレだよ」
「別に…キャラとかじゃなくて、私はもともとこういう感じだから」
「あっそ。柚希が自分のことどう言おうが勝手だけど、もう遅いよ。俺はもう柚希が女の子に見えて仕方ないからね」
「……ひっ」
目を細めて笑う有馬が、何か企んでいるような気がして、そんな声が出た。