キミが可愛いわけがない
「…ごめん。だね。大事にしなきゃね」
「…っ、」
顔をあげてユズの顔を見ると、すごく悲しそうな顔をした。
ユズにそんな顔させたくて、こんなことしてるわけじゃないのに。
『俺だけでいいじゃん』
『俺ならどんなユズでも受け止めるし大切にするのに』
たくさん思いつくセリフは、全部。
ユズが必要としていないもの。
ユズにとって、幼なじみの俺との時間は楽しいものなのかもしれないけど、
男の俺からかけられる愛の言葉ほど、苦しめるものはきっとないから。
「もし若松と一緒になったとして、また昔みたいに女子から嫌な言われ方されたら…」
女子に嫌われている若松と一緒にいれば、そうなる可能性だってあるわけで…。
「…究極、男じゃないなら誰でもいいのかもね。多分、平気だと思うよ」
ユズはそう言って、下手くそな嘘笑いを俺に向けた。