私のご主人様Ⅳ
見知った顔
そして、その嫌な予感が当たったのだと知ったのはその後すぐだった。
満面の笑みを浮かべて仕事を持ってきた信洋さんが現れたことで、私も部屋に戻ることになった。
部屋を出るとき、季龍さんの機嫌が悪いような気はしたけど、お仕事の邪魔になるわけにもいかず早々に部屋を出た。
とりあえず、台所の現状だけでも把握しよう。部屋には戻らないでそのまま台所に向かう。
「雑にやるなと言ってるだろう!」
「なによっ!ろくに畳まないくせに!!」
「お前、自分の立場ちゃんと分かってんのか」
突然響いた声にその場で飛び上がりそうになる。
今の声、聞いたことあるような…。洗濯場から聞こえてきたその声に、引き寄せられるようにわずかに空いたドアに手を伸ばす。
『出来ればお前はそいつと顔を合わせるな』
季龍さんの声がギリギリのところでその手を止める。
…やめよう。例えこの先にいる人が誰であろうと、私は関わるべきじゃない。…助けを求められても、その手をつかめないんだから。