私のご主人様Ⅳ
伸ばした手を引っ込めて背を向ける。
台所に向かって足を進めようとしたその時、背後でドアが開け放たれた音に驚いて振り返った。
その瞬間、今まさに洗濯場から飛び出してきたその人と視線が重なる。
記憶にあるより少しやつれた顔。そして、ろくに身だしなみを整えてなさそうな格好は、学校で見せていた可愛らしい彼女の姿をぼかしてしまう。
私を見た瞬間、見開かれたその目に自分の姿が映る。
互いに見つめ合って固まっていた。
どうして、ここにいる。互いに思うことも恐らく同じだったはず。
でも、どうして彼女が、高崎詩音がここにいるのか、分からなかった。
でも、次の瞬間高崎さんの目に宿ったのは憎悪で、一瞬でもその気に飲まれてしまう。
「なんで?…何であんたがここにいんのよ!!」
「っ!?」
「琴音さん!!」
「てめぇ誰に手あげてんだ!!」
首を狙って伸ばされた手はすぐに相須さんと瀬名さんに離される。
2人に拘束されているのにも関わらず、高崎さんの鋭い眼光はその光を一切欠けさせない。
まるで獰猛な動物のような目だった。