私のご主人様Ⅳ

「…琴音、それ外さないんだな」

「…」

暁くんが視線を向けているのは私の左手の小指を見つめている。そこにつけられた指輪に右手の指先で触れる。

『…必ず迎えに行く。だから、待ってろ』

永塚組の屋敷を離れる直前、季龍さんにつけられたそれに気付いたのは、この屋敷にたどり着いてから。

それが意味することを、正確に捉えた訳ではないと思う。だけど、これを外すことで季龍さんのとの繋がりが消えてしまいそうで怖かった。

「…連絡、来てない…?」

「…あぁ」

ここに来るとき、私はもちろん、梨々香ちゃんも、源之助さんも、全員が携帯を置いてきた。そして、私がいつもつけていたネックレスとアンクレットも。

それは、万が一この場所を敵に知られないようにするため。

だから誰かが定期的に来ることもなければ、こちらから状況を確認しに行くこともない。

だから、私たちは季龍さんたちの状況を全く知らない。無事なのか、そうじゃないのかさえ…。

その不安は日が経つごとに大きくなるばかり。だからこそ、その話題に触れることを私たちは避けている。
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