私のご主人様Ⅳ
「やめてよ。…あんたが関わってくると私が不利になんのよ!!余計なことすんな!!」
「…高崎さん」
「…あんたほんとにムカつく。あんなに大事にされて、愛されてるのを見せつけたいわけ!?」
ダメだ。完全に壁を作られてる。
敵意をむき出しにされるのは初めてじゃない。でも、向けられていいものじゃない。
…でも、どうしてだろう。高崎さんの敵意はまるで自分を守る殻みたいで、嫌な感じははそれほど感じなかった。
「さっさとどっか行って。あんたが近くにいるだけで怒られるのはこっちなのよ」
早口に言い放った高崎さんは一切私の方を見ようとはしない。
余計なことはしない。互いの干渉はお互い不利益でしかない。
分かってる。分かってるのに、私の手は高崎さんの服の裾を掴んでしまう。もちろん怪訝な顔をして振り返る高崎さんは、迷惑そうな顔を隠そうともしなかった。
「だから、何?誰も見てないうちにさっさといなくなりなさいよ!」
「…わ、私は…買われた、の。季龍さんに」
「は?…なにそれ。あんた人身売買にでもかけられてたってわけ?」
「コク」
1日遅れの返事に高崎さんは一瞬反応を遅らせる。その顔から敵意が一瞬でも消えたのが分かった。