私のご主人様Ⅳ
「確かに、私は恵まれてると思う。地獄しかないと言われていた先で、大切にしてくれる人たちに守られているから。…でも、高崎さんだって、幸運だと思う」
「…」
「ここにいること、永塚組に留まっていること。それは、幸運じゃないのかな」
永塚組の人たちは、優しいと思う。そして、理不尽に誰かを傷つけたりしない。
近くで見てて感じていたこと。だから、例えヤクザでも永塚組にいられることは幸運だと、そう思う。
高崎さんは表情を変えないまま。でも、その顔は呆れたようなものに変わってしまう。
「…バカじゃないの?」
「…」
「ここにいる奴らは平気で人とお金を天秤にかける。そんな人たちがまともだって言えるの?…本当に優しいならね、あんたのことを本当の意味で救ってるんじゃないの?あんたがここにいるのは、そういう人たちだったからよ」
「…でも」
「でもじゃない。あんたは、警察に全国的に行方不明者として捜索願が出されてる。そんなあなたを自分たちがお金で買ったからって、隠して、ここに留めてる人たちが優しいの?悪いけど、私はやっぱりここはヤクザなんだって思うだけよ」
言葉を失うのは私の方だった。