私のご主人様Ⅳ
「あ…」
伸ばした手は季龍さんに届かない。
ダメだ、このままじゃ相手の思う壺だ。
…あまり得意じゃないけど、やるしかないっ!!
「琴音、俺たちも離れ…」
「え?」
「!?」
暁くんたちも、車に乗り込んで出発しかけた季龍さんたちも、全員止まる。
私が、ポケットナイフを男の人に突き付けたから…。
もちろん、ナイフを突き付けられた男性も目を見開いて固まっている。それもそうだろう。だって、このナイフはこの人が持っていたんだから。
沈黙が周りを支配する。
先に動いたのは男性の方だった。
「なんでそんなもの持ってるの?」
「…」
「まさか、俺たちの目を盗んで持ってたとかじゃないよね?」
「…」
「なにか言いなよ。“琴葉”ちゃん」
…やっぱり、そうなんだ。
この人は奏多さんじゃない!!