私のご主人様Ⅳ
それは一瞬だった。
「っ琴音!!」
横から突き飛ばされてバランスを崩す。
自分の体が傾いていくのが分かる中、視界の隅に見えたのは、背後に回したはずの、男性の手に握られる黒光りするもの。
左足が体制を整えようと後ろへ伸びる。
その刹那、響き渡った銃声に赤色の液体が飛んだ。
スローモーションが終わったのはその時だ。
何とか踏み留まって振り返った先に、暁くんが左腕を押さえて倒れていた。
「っ暁くん!!っ!?」
「琴音!」
「動くな」
気づけば捕らわれていて、頭に押し付けられるそれから硝煙のにおいがした。
全員が動きを止める。それでも、今にも男性を殺さんとする殺気はビリビリと肌を刺すようだった。