私のご主人様Ⅳ

それは一瞬だった。

「っ琴音!!」

横から突き飛ばされてバランスを崩す。

自分の体が傾いていくのが分かる中、視界の隅に見えたのは、背後に回したはずの、男性の手に握られる黒光りするもの。

左足が体制を整えようと後ろへ伸びる。

その刹那、響き渡った銃声に赤色の液体が飛んだ。

スローモーションが終わったのはその時だ。

何とか踏み留まって振り返った先に、暁くんが左腕を押さえて倒れていた。

「っ暁くん!!っ!?」

「琴音!」

「動くな」

気づけば捕らわれていて、頭に押し付けられるそれから硝煙のにおいがした。

全員が動きを止める。それでも、今にも男性を殺さんとする殺気はビリビリと肌を刺すようだった。
< 142 / 289 >

この作品をシェア

pagetop