私のご主人様Ⅳ

「へぇ?そんなに大事なんだ。お姫様」

「そいつを離せ」

「やだね。そんなことしたら、俺が殺される」

首に腕が回ってくる。そのまま下がれと言わんばかりに引っ張られる苦しさに負けて、引きずられるように後ずさる。

それに合わせて距離を詰めようとした季龍さんたちは、なぜか途中でその足を止める。

季龍さんたちが手を伸ばしても届かない、かつ動き出せば季龍さんたちが動けば引き金を引くのに十分な時間が取れるところまで下がらされる。

周囲の人が異変に気がついたのか、ざわざわと野次馬が出来始める。

それでも、男性は動かなかった。野次馬に退路を塞がれていく中、男性はあまりにも冷静で、背中越しに伝わってくる鼓動も変わらずリズムを刻むだけだ。

その時だ。

男性が、銃口を梨々香ちゃんに向けたのは…。

瞬時に引かれる引金を合図に飛び出す銃弾。唐突なことに梨々香ちゃんは動かないまま。

気づいて動き出した時にはもう間に合わない。だが、不意に梨々香ちゃんを巨体が覆い隠した。
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