私のご主人様Ⅳ
「っ信洋!追いかけるぞ!!」
「っおう!!平沢さん!あとたのんます!!」
「速く行け!!!」
ドアを閉めるのも待たずに走り出す車。
運転する信洋はいつも以上に荒い運転で、黒のワゴンを追う。
どうして奪われた。目の前にいたのに、俺が、油断さえしなければ…。
「っくそ!!」
「若!どこ行ったか探せよ!!」
「分かってる!!」
車を縫うように道路を進む。
だが、その時目に写った光景に言葉を失った。
“黒のワゴンに囲まれていた”。まるで視界を塞ぐように。明らかな陽動を突きつけられていた。
「ナンバーは!?」
「…見てねぇ」
「っくそ!!」
拳をハンドルに叩きつけた信洋は苛立った様子を隠すこともない。
俺たちを嘲笑うように黒のワゴンは1つ、また1つと姿を消していき、やがて信洋が狙いを定めた1台だけになる。