私のご主人様Ⅳ

親父は息をつくと、俺の肩を叩く。

「似んでもいいところが、似たんだなぁ。なぁ、季龍。わしは、お前にまで失わせたくない。だから、何としてでも連れ戻せ。そのために何も惜しむな。いいな?」

「っはい」

不意に表情を和らげた親父の言葉はあまりにも重い。

その重圧に飲まれまいと立ち上がると、親父はそれでいいというように口角を上げた。

「っ若!こと…」

廊下に飛び出してきた暁は左腕を吊っていた。そして、琴音の姿がないことに気づくと言葉を失った。

下げていた右手に力が入るのが分かる。臆することなく俺の前まできた暁に胸ぐらを捕まれた。

「…どうして、どうして追いかけなかったんですか!?琴音にはGPSをつけてあるはずじゃないですか!!」

「付けてないよ」

「え?」

「俺は、1回でも、ここちゃんにGPSなんか付けたことなんかないよ」

後ろに控えていた信洋の言葉に暁は目を見開く。

暁だけではない。平沢を除き、幹部連中も、ドア越しに様子を見守る奴らも驚いた顔をしていた。
< 150 / 289 >

この作品をシェア

pagetop