私のご主人様Ⅳ
親父は息をつくと、俺の肩を叩く。
「似んでもいいところが、似たんだなぁ。なぁ、季龍。わしは、お前にまで失わせたくない。だから、何としてでも連れ戻せ。そのために何も惜しむな。いいな?」
「っはい」
不意に表情を和らげた親父の言葉はあまりにも重い。
その重圧に飲まれまいと立ち上がると、親父はそれでいいというように口角を上げた。
「っ若!こと…」
廊下に飛び出してきた暁は左腕を吊っていた。そして、琴音の姿がないことに気づくと言葉を失った。
下げていた右手に力が入るのが分かる。臆することなく俺の前まできた暁に胸ぐらを捕まれた。
「…どうして、どうして追いかけなかったんですか!?琴音にはGPSをつけてあるはずじゃないですか!!」
「付けてないよ」
「え?」
「俺は、1回でも、ここちゃんにGPSなんか付けたことなんかないよ」
後ろに控えていた信洋の言葉に暁は目を見開く。
暁だけではない。平沢を除き、幹部連中も、ドア越しに様子を見守る奴らも驚いた顔をしていた。