私のご主人様Ⅳ

「だって、あのネックレスとアンクレットはGPSだって…」

「あんなもんにGPSつけれるわけないでしょ?そんな小型で充電要らずのものなんかまだ存在してない」

「じゃあなんで…」

「ここちゃんが無駄に外に出ようとしないようにするため。言っただろ。ここちゃんは恐らく、ここちゃんを売り飛ばした奴らに狙われてる。そっちの問題は全く片付いてない。だから、ここちゃんが俺たちの隙を見て逃げ出そうとするのを諦めさせるためについた嘘!」

一気に喋った信洋はため息をつき、まさかこんなことになるなんて思ってなかったとこぼす。

信洋のいう通りだった。元々は琴音の逃げる意欲を削ぐためだけについた嘘だ。その効果はてきめんで、琴音はつれきた直後に逃げ出したのを最後に1人で玄関から出ようともしなくなった。

庭に出るときでさえ、誰かの視線が自分に向いているのを見て外に出ていた。

そんな琴音が、俺たちの手を離れて動くはずがない。外にいるときは必ず誰かの手が届くと信じきっていた。

それなのに、俺はみすみすと琴音の手を離したのだ。

服をつかんだ琴音の顔が頭に浮かぶ。

どうして気付かなかった。ここにいる時でさえ、俺たちの邪魔をしないように動く琴音が、先を急ぐ俺の足を止めてまで訴えてきていたのに…。
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