私のご主人様Ⅳ
「でも、本当に逃げ出していたらどうしたんですか」
誰かの声に我にかえる。
仮に、もし仮にその脅しが嘘だと琴音が分かっていて、逃げ出したその時は。
「総出で探す。それ以外に方法なんかねぇだろ」
俺の言葉に目を見開いたそいつは、頭をかいて視線をそらす。
「まぁ、俺としては渡したケータイくらいは付けたかったけど、若に却下された。だから、ここちゃんに首輪なんかついてないんだよ」
今度こそ沈黙が落ちる。
探す手段など皆無に等しい。
分かっているのは、敵が奏多と瓜2つの男であることと、琴音がさらわれたのが黒のワゴンということだけだ。
と思い返してはっとする。
「おい!奏多は!?」
「え、昼になんか慌てて飛び出していきましたけど…」
「連絡取れ!」
「はい!!」
嫌な予感がする。決して外れることがないと分かっているそれは、電話を手にした奴の顔を見れば確信に変わる。
「…出ません」
「捕まってると見て間違いだろう。…人質が2人か」
平沢の言葉が、希望論を言いかけた奴らを黙らせる。