私のご主人様Ⅳ
「…まず、2人の安全が最優先。若、いいよね」
「当たり前だ。奴らの交渉には従うしかねぇ」
「親父さんの首って言われたらどうする」
一瞬で空気が凍りつく。
最も最悪な取り引き条件だ。組長の首が飛ぶなど、あってはならない。そんなことをすれば、親父の命はもちろん、永塚組まで奴らの手に落ちる。
「構わん。応じろ」
「親父!?」
「正気なんて言いませんよね!?」
一切迷いのない親父の一言に幹部たちが声をあげる。だが、ひと睨みでそれを黙らせた親父は、傍に控える田部を見る。
「もしもの時は田部、季龍につけ」
「…承知しました」
「田部さん!あんたまで!!」
「琴葉はわしの恩人だ!!死なせるわけにはいかん!!」
声を上げた幹部を押さえるように発した親父の声に、誰もが言葉を失った。