私のご主人様Ⅳ
「まぁ、そんなわけで大人しくしててね?」
「っ待て!奏太!!!」
奏太さんはくるりと足の向きを変えると、部屋から出ていく。奏多さんの声なんか聞いてないみたいだ。
扉が閉まると、奏多さんと2人で取り残される。奏多さんを見ると、なぜかうつむいていて、視線を合わせてくれなかった。
「奏多さん」
「ごめん、琴音ちゃん。俺のせいで」
「っ!?フルフル」
「少しくらい、責めてくれた方が楽なんだけどなぁ」
「無事で、よかったです…」
「ありがとう。…さっきも言ってたけど、あいつは俺の双子の弟。…ずっと行方不明だったんだ。小学生の時親が離婚して、奏太を連れた父さんはすぐに蒸発してさ。それ以来ずっと音信不通だったのに、いきなり連絡が入って。俺、舞い上がっちゃったんだよ。ずっと探してた弟に会えるって思って、待ち合わせのところに行ったらいきなり気絶させられた」
酷いでしょ何て言いながら、奏多さんはまだ状況を理解していないように見えた。
そりゃ、そうだよね。何年かぶりに会えた弟に会いに行ったらいきなり気絶させられて、お前は人質だ何て言われちゃうなんて…。
そのせいか、奏多さんの顔はまるで小さな弟がしたいたずらに困っているお兄さんの顔だった。