私のご主人様Ⅳ
「奏多さん」
「…分かってるよ。弟でも、こんなことして許されるなんて思ってない。とにかく今は逃げる方法を考えなきゃね。」
奏多さんのいう通りだ。そんな感傷に浸っている場合ではない。今すぐ逃げなければ、季龍さんたちが不利な状況は変わらない。
奏多さんは後ろ手に縛られているけど、私の手は幸い前に縛られていた。
なんか引っ掻けたら切れそうなもの…。部屋の中を見渡すと、どこかの廃ビルなのか、割れたガラスや放置されたままのデスクが窓の方に押し退けられていた。
とりあえず手短なガラスの破片を拾う。とりあえず、奏多さんのロープからならいけるかな。
「琴音ちゃん、気を付けてね」
「コクコク」
後ろを向いてくれた奏多さんは、ロープを切りやすくするために、左右に引っ張ってくれている。そのお陰で奏多さんの手を傷つける心配も減った。
ノコギリの要領でガラスを当てていくと、少しずつ切れていく。黙々とその作業を繰り返していると、終わりがけは力ずくで引きちぎった。
ずっと力を入れていたせいで奏多さんの手首は真っ赤になっていたけど、奏多さんは気にすることなく私の手からガラスの破片を取ると、同じように私のロープを切り始めた。
同じように力を込めようとすると、ダメだと言われてやらせてもらえなかった。