私のご主人様Ⅳ

「琴音ちゃんに傷1つでも付けたら、若にどやされるから」

「…」

私が怪我して、奏多さんが怒られる…?

首をかしげると、笑われるだけで何も教えてくれなかった。

それでも、最後はロープを引きちぎって、1段階目はクリアする。後は脱出するだけ。そう言っても、それが1番難しいことは私も奏多さんも重々承知していた。

それでも、行かなければ状況は変わらないのだ。

奏太さんが出ていったドアには近づかず、机たちが押し退けられた先にある窓に奏多さんが向かう。

どこも怪我はしていないらしく、その動きは軽快そのものだ。

「…2階みたいだけど、行けるかな」

ボソッと聞こえてきた言葉は、飛び降りる気満々だ。確かにそれ以外にいい案は浮かばなかった。

机の上に何とか登り、窓に近づいて奏多さんと同じようにのぞき込む。

…確かに、行けそうだとは思う。気がかりなのは周囲に警備がいるかどうか。残念ながらすべてを見渡せる訳もなく、真下に人がいないとしても横にはいるかもしれない。

でも、悩んでいるこの時間すら惜しいのも事実。
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