私のご主人様Ⅳ
「俺たちはさ、ただの不良グループみたいなもん。まぁ、昔なら暴走族とか、言われてたと思う。それがさ、組に貸しを作っちゃったわけ。バカだよなぁ。踏み込んでいい領域を越えちゃったんだから」
「…その貸しを、返せって言われた?」
「そう。相手は中野蓮美。捕まることが分かってたみたいだったよ、あいつ。わざわざ細かく注文つけてきたし」
苦笑を浮かべた奏太さんは、伸ばしかけていた手を止めて、そのまま下げる。
「…ごめん。あんたは、ただの被害者なのに。巻き込んで、本当にごめん…」
「…謝られても、いいよ、なんて言えないです」
「そうだよな…。でも、ごめん」
謝ることしか出来ないと言うように何度も繰り返すその言葉に返す言葉が思い付かなくて、黙りこんでしまう。
奏太さんは、大きくため息をつくと虚空を見上げてしまった。
「………バカだよなぁ。兄貴に会いたくて、がむしゃらに動いてたらいつの間にかこんなことになってて…。兄貴と似たような道を進んでたことにもびっくりしたけど、運がよかったのは兄貴の方かな。俺は見事に悪いやつらに利用されるだけのバカになって、やっと会えた兄貴の敵になっちゃってさ…」