私のご主人様Ⅳ

「…それは、違うと思います」

気づけば口が開いていた。

奏太さんの目は怪訝な色をしていて、そこで口を止めることは出来なかった。

「確かに、奏多さんは、優れた人に拾ってもらったのかも、しれない。…それは、すごく運が良くて、そんな人に見込まれたのも、すごいことです。…でも、あなただって、運が良いと思います」

奏太さんは否定も肯定もしない。

1度息をつき、顔をあげて奏太さんと視線を合わせる。

「あなたは、仲間がいます。…あなた自身がバカだって分かってることに、着いていこうとする人たちがいます。…それは、運が良いことじゃ、ないんですか?信じ合えている仲間を持ったのは、あなたの実力です」

「…優れた人に拾ってもらったのも、少しでも正しくあろうとした人を集めたことも、どちらも運が良くて、奏多さんと、あなたが持っている力だと、思ったから…」

奏太さんの表情は変わらない。

それでも、視線は逸らさなかった。逸らしたら、いけない気がしたから。
< 167 / 289 >

この作品をシェア

pagetop