私のご主人様Ⅳ

しばらくして、奏太さんは視線を逸らして部屋を出て行った。それについて行った人たちも消え、部屋に沈黙が落ちる。

風の音、建物が揺れる音が響く。

これからどうなるんだろう。多分、永塚組から解放されると言う2人に引き渡されるんだろうとは思う。

永塚組が拘束した相手。恐らく、いや、確実に私たちが避難した抗争の当事者。

そして、関原の名を持つその人は、季龍さんの実の父親。季龍さんのお母さんを、梨々香ちゃんを、自身の家族を売った人…。

『忘れるな、捨てられてまた俺に会うようなことだけはするな』

あの時の、その世界の奥底で聞いた声はまだ耳に残ってる。あそこに戻ることだけは、してはいけないことだ。

そのために、私が出来ること、それは…。

ドアが開く。入ってきたのは奏太さんと、どこかで見たことがあるような、左目に眼帯をした少年と、どこか宙を見ているような目をした男性だ。

少年と視線が重なる。片目しか見えていないのに、まるで蛇に睨まれたように息が詰まる。

無言で近づいてきた彼に、逃げる間もなく首を捕まれてしまった。
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