私のご主人様Ⅳ

「っ…は、ぅ………」

「やめといた方がいいですよ。永塚季龍に殺されます」

奏太さんの制止の声にすぐに手は離れる。でも、男の人の怒りに触れたのか、奏太さんは殴られてしまった。

「俺に指図してんじゃねぇ!!」

「っ…まさか。ただのお節介です」

「…」

一言で言うならば横暴。彼の態度には、奏太さんに対して感謝の欠片もない。仮にも、彼を助けたというのに。

奏太さんは無言のまま頬を拭うと、まっすぐ少年を見つめ返す。その目には恐怖など浮かばず、ただ力強い意志が見えるようだった。

「中野さん、これであんたに借りは返した。縁を切らせてもらう。これこっきりで、あなたたちと俺たちは赤の他人。それで、いいですよね」

「…ッチ恩知らずが」

これは、了承なんだろうか。中野と呼ばれた少年は舌打ちをしながらも、それ以上奏太さんを傷つけようとはしなかった。

奏太さんは一瞬私を見たけど、その視線はすぐにそらされて、彼の仲間に指示を出す。

未だ気絶したままの奏多さんが担がれて運ばれていく。そして次々と部屋を出て行く人たちを見つめていた奏太さんは、全員が部屋を出たのを見ると視線を向けてくる。

そして、誰も止める間もなく私の肩に手を回し、抱き寄せられた。
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