私のご主人様Ⅳ
「俺のことなんて信じなくていいけど、兄さん…あんたの王子様のことは信じてやって。絶対、助けは来る。だから、信じて」
「っえ…」
耳元で呟かれた言葉。一瞬重なった奏太さんの目は、決意に満ち溢れていて…。
口を開こうとした直後、奏太さんはまるで投げ飛ばされるように引き離された。
「何勝手に触ってんだ、てめぇは!!」
「ッ!?やめて!!」
容赦のない蹴りを浴びせようとする少年に思わず声が出る。でも、一瞬で切り替わったターゲットの視線が自分に向けられたことに息を飲んだ。
でも、恐れていた痛みはなく、少年はいつの間にか奏太さんを睨み付けていた。
「失せろ」
「分かってますよ。これで、あんたたちともおさらばだ」
まるでさっきのことが嘘のように、ごく自然に言葉を交わした2人。
奏太さんの視線が一瞬こちらに向く。口だけが動いて紡いだのは、待っててという言葉。
今度こそ動き出した奏太さんが最後の1人。
大きく響いたドアが閉められ、残されたのは私と片目の少年、どこか遠くを見ているような男性だけ。