私のご主人様Ⅳ
不意に廊下が騒がしくなる。その喧騒は徐々に近づいてくるごとに、足音も響いてくる。
次の瞬間、開け放たれた襖から転がるように部屋に入ってきた奴に目を見開いた。
「っ若!奏多が、戻ってきましたっ!!」
「え?」
「どこにいる!」
突然の出来事に呆ける信洋に対して、平沢は迅速に事態を把握する。だが、その態度は冷静さに欠けているのがすぐに分かる。
玄関にいるという奏多の顔を見ようと膝に手をついた平沢を止めると怪訝な顔を向けられた。
「本当に奏多なのか確かめる」
「…あぁ、そうだな」
そこでようやく我に返ったのか、顔を引き締める平沢と事態を飲み込んだ信洋を伴い玄関に向かう。
もう2度と繰り返してはいけない。同じミスを犯すわけには…。