私のご主人様Ⅳ
奏多と双子の兄弟であること。
幼い頃に両親の離婚で離ればなれになり、連絡も取れなくなったこと。
奏多を探すつもりで不良仲間と付き合い始めたこと。
とあるいざこざで中野蓮美に借りを作ってしまったこと。
そして、今回起こした事件は中野蓮美による指示であったこと…。
「借りを返せと言われた。中野と関原の組長を永塚組から解放すること。そして、お姫様…宮内琴葉をあいつらに引き渡すこと。それができたら、縁を切る約束だった」
「じゃあ何か。中野は全部始めっから俺たちに捕まることまで計算してたってことか」
信洋の顔が歪む。今のを聞いた限りではそういうことだろう。
「…それで、てめぇはなんでここに来た。今のを話して許してもらおうってなら、バカにも程がある」
「許してもらおうなんて甘いこと、考えてない。…でも、俺は兄貴を探してた。やっと見つかった兄貴と一緒にいたい」
奴の目は本気だ。奏多を探していたことも、やっと見つかった兄貴と一緒にいたいと言うのも全て本気だろう。
同情はする。離ればなれになる恐怖は分かる。実際、離れていたこいつらなら、俺の痛みよりずっと深いはず。
だが、だからといって許せるわけではない。永塚組にたてをつき、実際に組員に怪我を負わせた上、永塚の女を奪った。
そんなやつを同情で許せるはずなど、なかった。