私のご主人様Ⅳ
「仕方ねぇ。予定変更だ」
「…」
胸ポケットから出したのは銀色のケース。
それが嫌なものであることなんか、一瞬で分かる。でも、逃げる術なんか持っているはずもなくて、ただ迫るそれを見つめることしか出来なかった。
「狂え。壊れて、奴を絶望させろ」
銀色のケースから出てきた注射器はそこまで大きさはない。
でも、嫌な予感だけはずっとしていて。
腕に突き刺さったそれの中身が全て消える。
「…」
「…」
…何も、感じない。変な高揚感も、熱も何も感じない。
でも、次の瞬間心臓が高鳴る。息が詰まる。視界が歪む。
「あ…あ、ぁ…」
気持ち悪い感覚が体を襲う。まるで、身体中を引っ掻き回されてるみたいだ。
顔をあげる。そこにあったのは黒い塊。それが迫ってきた瞬間、落ちた。