私のご主人様Ⅳ

怖がっていることを知っていた。

触れられることを、気持ちを表に出すのを、奪われることを。

初めは触れようとするだけで怖がっていた。慣れてきて、少し話すようになって、触れても怖がらなくなった。

笑顔を向けられるようになって、手を伸ばされるようになって、ようやく震えは消えて身を預けるようになった。

塗り替えてやりたいと思っていた。傷つけられた過去の恐怖を打ち消すほどの幸福と安らぎで満たしてやりたいと、願っていた。

なのに、また傷つけられた。しかも、過去の奴以上の恐怖と絶望を与えて…。

奴を睨み付ける。琴音を傷つけた奴を、奪った奴を、消し去りたい。…殺してやる。

気づけば体が動いていた。奴に歩みを進める中、奴が構えた物が何なのかも判断しないまま。

「若っ!!」

「死ねよ!!」

体に衝撃を受ける。後ろに倒れていく中、銃弾が飛んでいくのが見えた。

背中から床に落ちる。ほぼ同時に右手をついてその場から離れる。その場所に撃ち込まれた弾丸に冷静な判断が戻ってくる。
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