私のご主人様Ⅳ

「……………………!!!」

「………………」

音がする。

だが、1枚の大きな壁に阻まれたように音は霞んでいる。

手が熱い。燃えているような感覚がある。

それでも、動きは止めなかった。

止めてはいけない気がした。

上げて、降り下ろす。上げて、降り落として…。それを阻むものは振り払った。

ただ邪魔なものだった。

腕を上げる。その時、

「ッここちゃんを理由に殺るんじゃねぇ!!!」

耳を貫いた声に降り下ろしかけた腕が止まる。

目の前には、顔から血を流した男がいる。きっと、これ以上やれば命に関わる。

自分の手が真っ赤であることに気付く。
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