私のご主人様Ⅳ

視線を後ろに向ける。

暁に支えられた琴音がいる。

…琴音を理由に殺しをすれば、あいつの背に負わせなくていいものを押し付けてしまう。

「若、加減しろって」

「…」

「まぁ、殺したくなる気持ちもわかるけどさ」

口ではそう言いながらも、気絶してるらしい中野を見る目は冷たかった。

琴音に視線を戻す。頬に汚れがあることに気付いて、伸ばしかけた手が赤いことを思い出す。

「…信洋、琴音を病院に運ぶ」

「了解」

「暁、奏多。行け」

「「はい!!」」

服で拭っても取れない赤色。こびりついたのか、自分の手が傷ついたのか…。
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